「MIDIの打ち込みがどうしても機械的に聴こえる…」 そんな悩みのカギを握るのが、ベロシティとエクスプレッションです。
この2つを理解すれば、同じフレーズでも“息づかい”のある自然な演奏に変わります。
ベロシティとは?──音の「勢い」や「アタック感」
ベロシティ(Velocity)は、MIDIノートがどれだけ強く押されたかを示す値(0〜127)です。 実際のピアノで言えば、鍵盤を叩く強さそのもの。 打ち込みでは「音量」と「アタック(音の立ち上がり)」を同時にコントロールします。

自然に聴かせるポイントは、全ノートのベロシティを揃えないこと。 微妙なムラをつけるだけで、演奏が一気に“人間味”を帯びます。
ヒント: ピアノではベロシティが「音量」、ドラムでは「叩く強さ」、弦楽器では「弓の圧力」に対応します。
エクスプレッションとは?──音の「抑揚」や「表情」
エクスプレッション(Expression)は、CC#11と呼ばれるMIDIコントロールチェンジの1つ。 演奏中の音量変化をリアルタイムで調整し、ベロシティだけでは出せない“表情”を加えます。

たとえば、ストリングスのフレーズで音をスーッと立ち上げたり、 終わりにフェードアウトさせたりするのはエクスプレッションの役目です。
ベロシティ=瞬間の強さ、エクスプレッション=時間的な抑揚と覚えましょう。
ベロシティとエクスプレッションの違い
項目 | ベロシティ | エクスプレッション |
---|---|---|
コントロール方法 | ノート単位 | 曲線(オートメーション) |
役割 | 演奏の強さ(瞬間) | 音量変化・抑揚(時間軸) |
CC番号 | なし(ノート情報に含む) | CC#11 |
適用例 | ピアノ・ドラム・ベースなど | 弦・管・ボーカル音源など |
人間らしく聴かせる3つのステップ
① ベロシティをムラづけする
- 8分音符ごとにランダムで±5〜10程度の差をつける
- アクセントをつける箇所を意図的に強調
② エクスプレッションカーブを描く
- フレーズの始まりをやや弱めに、終わりをフェード
- 強弱の波を作って息づかいを表現
③ クオンタイズを“甘め”に設定
- 完全に揃えず、±10〜20ティックのズレを残す
- グルーヴを感じる“ゆらぎ”が生まれる
DAW別設定ポイント
Cubase
ベロシティは「キーエディター」でドラッグ調整。 エクスプレッションは「オートメーションレーン」で描けます。
Logic Pro
ピアノロール下部にベロシティバー。 CC#11は「MIDIドロー」でカーブを作成可能。
Studio One
ベロシティはイベント内に表示。 エクスプレッションカーブは「オートメーション」パネルで編集。



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まとめ:機械に“息”を吹き込もう
ベロシティは“力強さ”、エクスプレッションは“呼吸”。 この2つを意識するだけで、打ち込み演奏が見違えるほど自然になります。
次回は、ピッチベンドとモジュレーションでリアルな演奏を再現で、 さらに“揺らぎ”を表現する方法を学びましょう。