「打ち込みの演奏が生っぽく聴こえない…」 その原因の多くは、ピッチベンドとモジュレーションを使っていないことにあります。
この2つは、MIDI表現の中でも“感情”を作る最も重要な要素。 この記事では、リアルな演奏表現を生み出すコツを図解で紹介します。
ピッチベンドの仕組み
ピッチベンドは、音の高さを滑らかに変えるためのMIDI信号です。 ベンドホイールを操作した際の動きをデータ化し、音程を上下に揺らします。
ピッチベンドは14bit(0〜16383)で構成され、センター値は8192です。 実際に±何半音まで曲げるかは、RPN 0,0(Pitch Bend Sensitivity)で設定できます。
例:RPN 0,0 = 2 → ±2半音まで変化

通常はホイールやジョイスティックで操作し、DAW上ではカーブで描けます。
- CC番号:専用(ピッチベンドメッセージ)
- 値の範囲:-8192 ~ +8191
- よく使う範囲:±2セミトーン(設定で変更可能)
例: ギターソロで1音半チョーキング、シンセでグライド風スライド。
モジュレーションとは?──音に“揺らぎ”を与える
モジュレーション(Modulation)は、音に周期的な変化を加えるコントロールです。 代表的な使い方はビブラート。 波のように音程や音量を揺らすことで、演奏に温かみと感情を加えます。

モジュレーションはMIDIのCC#1で制御され、ホイール操作に割り当てられていることが多いです。
用途 | 説明 |
---|---|
ビブラート | ピッチを小刻みに上下させる |
トレモロ | 音量を周期的に上下させる |
フィルター変化 | 音色を周期的に変化させる |
ピッチベンド=滑らかに動く変化
モジュレーション=周期的に揺らぐ変化
ピッチベンドとモジュレーションの違い
項目 | ピッチベンド | モジュレーション |
---|---|---|
役割 | ピッチを滑らかに変化 | ピッチ・音量を周期的に揺らす |
CC番号 | 専用メッセージ | CC#1 |
操作例 | チョーキング、スライド | ビブラート、トレモロ |
値範囲 | -8192〜+8191 | 0〜127 |
表現の方向 | 一度きりの変化 | 繰り返す変化 |
リアルに聴かせる3つのコツ
① 音源側のベンドレンジを確認する
ピッチベンドの範囲(±2〜12半音)は音源側で設定可能。 DAW側と一致させないと、実際の音程がずれることがあります。
② ベンドカーブを自然に描く
急上昇→静止→ゆるやかに戻す、など緩急をつけることでリアルさが増します。 特に弦・管楽器では直線よりもカーブの方が自然です。
③ モジュレーションは“控えめ”に
振幅を大きくしすぎると不安定に聴こえるため、 深さは最大値の40〜60%程度が目安です。
DAW別設定ポイント
Cubase
「ピッチベンド」と「モジュレーション」はピアノロールの下部エリアに表示可能。 描画ツールでカーブを編集できます。
Logic Pro
ピッチベンドはリージョン内でオートメーション設定。 モジュレーション(CC#1)は「MIDIドロー」で制御。
Studio One
ピッチベンドカーブを直接記録可能。 CC#1は「オートメーションレーン」から追加します。



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まとめ:打ち込みに“生命感”を与える
ピッチベンドは「音程の流れ」、モジュレーションは「音の呼吸」。 2つを組み合わせることで、打ち込みは一気に生演奏のように変わります。
次回は、MIDIエディターの使い方と効率化テクで、 打ち込み作業をスピーディーに進める方法を紹介します。