「C→G→Am→F」だけだと、少し単調だな……。 そんなときに“流れ”を作るのが分数コード(オンコード)です。
この記事では、分数コードの仕組み・使い方・実践例をわかりやすく紹介します。
分数コードとは?
分数コードとは、コード名の右にスラッシュでベース音を指定するコードのことです。
たとえば「C/E」は、「CのコードにEのベース音を組み合わせた」形を意味します。
C/E = コードトーン(C・E・G)+ ベース音(E)
スラッシュの右側は「土台となる音(ベース)」を表します。 このベース音を変えるだけで、曲全体の重心や流れが変化します。

分数コードが生む“重心の移動”
たとえば次の進行を見てみましょう。
C → C/B → Am
ベースラインが C → B → A と自然に下降しています。 これにより、コードチェンジが滑らかに感じられます。
このように、分数コードを使うと和音の切り替えが自然になり、 聴き手に「感情の流れ」や「時間の移動」を感じさせることができます。
💡 POINT: 分数コードは「和音の装飾」ではなく、「感情の重心を設計するツール」。
実際の使用例(J-POP編)
曲名 | 使用例 | 効果 |
---|---|---|
スピッツ「チェリー」 | C → C/B → Am → Am/G | 切なさと流れを強調 |
米津玄師「アイネクライネ」 | F → F/E → Dm7 | 儚く落ちていくような印象 |
King Gnu「白日」 | G/B → C → D | 推進力と厚みのある展開 |
分数コードは「感情の移ろい」を作る装置。 バラード、映画音楽、ポップスなど、あらゆるジャンルで使われています。
ギター・ピアノでの押さえ方
🎸 ギターの場合
- ベース音(スラッシュ右側)を6弦または5弦で指定
- コードフォームはそのまま、ベースだけ動かす
- C/Eなら6弦開放Eを鳴らし、5弦3フレット(C)を押さえる
🎹 ピアノの場合
- 右手でコード(例:C)を弾く
- 左手でスラッシュ後のベース音を弾く(例:E)
- 「右手はC、左手はE」でC/Eを表現

分数コードを使うときの注意点
- ベースが濁らないように、低音を弾きすぎない
- 分数コードを多用しすぎると進行がぼやける
- ボーカルやベースパートとぶつからないよう確認する
特にバンドアレンジでは、分数コードを入れる位置を慎重に選ぶことで 「静かな深み」を持つ進行に仕上げられます。
応用:代理コード+分数コードの組み合わせ
分数コードは、代理コード(機能代用)と組み合わせるとさらに表情豊かになります。
C → Am7/G → Fmaj7 → G7
ベースが C → G → F → G と下降しながら、コードが自然に繋がります。 代理コードが「機能の置き換え」だとすれば、分数コードは「流れの架け橋」。 メロディとベースの距離をなめらかに繋げることができます。
コード | 構成音 | ベースに指定されている音 |
---|---|---|
C | C – E – G | C(通常) |
Am7/G | A – C – E – G | G(スラッシュの右側がベース) |
Fmaj7 | F – A – C – E | F |
G7 | G – B – D – F | G |

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まとめ|分数コードは“感情の流れ”をデザインする
分数コードを使うと、単なるコード進行が“物語”を持ち始めます。 ベースの動きによって、曲の明暗や流れを自在にコントロールできます。
- 重心を下げると“切なさ”が生まれる
- 上げると“希望”が感じられる
- 停滞させると“安定”を演出できる
次の作曲で、ぜひ「C→C/B→Am」のような流れを試してみてください。